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特集 精神分裂病の遺伝因と環境因
養子法による分裂病の研究(展望)
Adoptee Study on Schizophrenics
南光 進一郎
1
Shinichiro Nanko
1
1東京大学医学部脳研究施設心理
1Institute of Brain Research, University of Tokyo Faculty of Medicine
pp.689-695
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202953
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I.はじめに
精神分裂病の病因としての遺伝と環境の役割を明らかにする実証的な研究は,今のところ臨床遺伝学をおいてほかにない。とりわけ双生児研究は一卵性のふたごと二卵性のふたごの一致率を比較することによって,遺伝と環境の役割を分離する有力な武器である。
1930年代から60年代にかけて相次いだ双生児研究は,いずれも一卵性のふたごに60%から80%という高い一致率を報告した。これが長い間分裂病に遺伝が関与する証拠とされてきたのである。ところが60年代に始まった北欧の国民登録による双生児研究は,従来の研究に比べてきわめて低い一致率を報告し,遺伝の役割に疑問がはさまれることになった。このことがきっかけとなって新しい方法論,すなわち養子法を用いて遺伝と環境の役割を分離しようとする試みが脚光をあびるようになる。
養子法による分裂病研究はその方法がまだ新しいにしても大変興味ある主題である。にもかかわらずわが国ではまだ詳しく紹介されたことがない。本稿ではまず養子法の原理および研究方法について述べ,次にこれを用いた分裂病の研究を主として病因論の面から概観してゆきたい。
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