講座 法律の知識
養子縁組に関する法律
丸山 光夫
pp.33-36
発行日 1957年9月10日
Published Date 1957/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201487
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昔,たとえで江戸時代などではよく家督相続をめぐつて血なまぐさい争いが行われ,いわゆる御家騒動というものの絶え間がなかつたのですが,これは「家」というものを中心にした封建社会の中の人間関係から考えますと,止むを得ない結果であつたといわざるを得ません.「家」というものを中心として社会が秩序ずけられていたのですから,いきおい一人々々の人間はそのような「家」の秩序の中に組入れられてしまつて,何か事があつた場合でも当の御本人の意思(意志という言葉は何か直線的な感じを与えますが,意思という場合にはもう少し範囲が広く,思うこと全体をひつくるめたような感じです)は全く無視されてそれとは無関係に事が運ばれてしまうというのが普通のことだつたのです.このような考え方は明治になつてからも依然として生き続け,戦争が終るまでは社会の中心的な考え方を示していたわけですが,考えようによつては今日でもなお社会の底流として大きな力を持つているといわねばならないでしよう.しかし今日では一応原理的にはこのような考え方は排されて,どこまでも一人々々の人間,つまり個人の意思を尊重するという方向に向つております.これが個人の自由といわれるものなのです.つまり一人々々の人間が外からの力によつて動かされるというのではなくて,一人々々の人間が自分自身の責任に於いて自ら考え自ら決意し自ら行動するということ,即ち自らに由るということが自由の意味なのです.
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