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I.はじめに
てんかんの精神症状は複雑かつ多彩であるが,おおむね,精神発作,挿間性精神症状,慢性の持続性精神症状に分類される。なかでも,精神分裂症様挿間症や精神発作について言及した文献は数も多く,研究の歴史も古い。過去において,てんかんと精神分裂病が合併しうるか否かといった疾病論的見地からの数多くの学説があった。
1913年Kraepelin1)はてんかんと分裂症の関係について,精神分裂症患者の15〜20%にてんかん様発作を認めている。1914年Giese2)はてんかんと分裂症の合併説を展開したが,Krapf3)(1928)はてんかんの側から把え,てんかんと分裂病の合併はありえないとし,てんかんの分裂症様症状は病因論的にepileptischer Defektすなわちてんかんの本態性変化の上に成立するとした。
一方,Meduna4)(1935)はこれらの2つの疾患に拮抗作用があり,合併はありえないとの考えを明らかにしたが,Jasperら5)(1939)はてんかんと精神分裂症の拮抗学説に反論し,分裂症状もてんかん発作も合併しうると考え,分裂症様症状は,ある特定の皮質焦点と関係があるのではなく,大脳活動の種々の因子が作用しているのであろうと推定した。さらに秋元6)(1937)は「合併」および「混合」の概念は病像成因論を含むがゆえに合併説に批判的見解を示した。
以上のように,精神分裂症とてんかんの問題は,分裂症様症状として,てんかんの側から把えることがすう勢となってきているが,てんかんの精神症状については,臨床脳波学の進歩から数多くの病因論が次々と展開されることになった。
しかし,挿間性精神症状と精神発作の境界は不明瞭な点も多く,臨床の場で遭遇する症例の中には過去の病因論のみでは解決されえない問題点があり,てんかんの精神発作と挿間性精神症状をけいれん発作との関係の中で把え,両者の関係を臨床脳波学的に検索することはこの問題についての一つのとらえ方として意義深いことと思われる。そこで,本論文では,てんかんの挿間症とけいれん発作との関係を脳波所見等と合わせてこまかく研究し,てんかんの精神症状発生機転について若干の考察を行なった。
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