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研究と報告
東京下町の慢性分裂病者について—地域住民の分裂病者に対する許容性とその社会的背景
Chronic Schizophrenic Patients in the Tokyo-Sitamati Area: the Tolerance for Psychiatric Patients and the Social Background of the Community
永田 俊彦
1
,
水嶋 節雄
1
Toshihiko Nagata
1
,
Setuo Mizushima
1
1同愛記念病院神経科
1Dept. of Neuropsychiat., Dōai Memorial Hospital
pp.511-518
発行日 1978年5月15日
Published Date 1978/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202762
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I.はじめに
M. Foucault1)は日本では「狂人の存在そのものに対する耐容度」(神谷美恵子訳による)が高いと述べているが,東京都内のいわゆる下町といわれる地域で,診療に携わってきた何人かの精神医たちの間で,下町では精神障害者に対する地域住民の受入れがよいといわれてきた2,3)。筆者2人はそれぞれ,地方都市・東京都内の大学病院,東京都下・都内の精神病院,工業都市の総合病院,農村地域の精神病院に勤務した経験をもつが,東京下町に位置する同愛記念病院神経科に勤務して,上記いずれの地域とも異なる家族・地域住民の分裂病者に対する寛大さに気づいた。更に筆者の1人が東京下町のF保健所で精神衛生相談業務に携わり,ますますその印象を深めた。しかし,このような直感的印象を具体的・数量的に示すことは困難であり,また,そのためのフィールドワークも人権問題にからむことで実行はむずかしい。しかし,東京都という大都市の一画に,精神障害者に対する「許容度」の高い地域が存在するのならば,たとえ病床のない一総合病院神経科外来からみたものであれ,それを具体的に浮彫りにしてみることは,精神障害者の「処遇」をめぐって興味ある事実が示唆されるとも考えられる。そこでわれわれは同愛記念病院神経科外来に通院中の分裂病者の社会生活の状況を統計的に分析し,代表的な症例を呈示して,彼らを支える地域の特性について若干の検討を加えてみた。
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