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研究と報告
精神分裂病者における唾液分泌反応の特異性—慢性分裂病者へのはたらきかけの基礎的検討
The Peculiarity of Salivary Response in Chronic Schizophrenics.: A Psycho-psysiological Approach to Occupational Therapy in Mental Hospital
菱山 珠夫
1
,
越沼 重雄
1
Tamao Hishiyama
1
,
Shigeo Koshinuma
1
1厩橋病院
1Umayabashi Mental Hospital
pp.711-716
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201380
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梅干はすつぱいという周知の事実に対する唾液分泌反応を指標として,一連の実験場面を設定し,固有唾液量に対する各実験場面での唾液分泌量の変動をみることによつて,精神分裂病者の接触疎通性の異常,さらにはこのような患者へのはたらきかけのありかたを実験的に検討しようとこころみた。
A)実験Ⅰ:
比較的症状の安定した分裂病者を対象とし,①梅干はすつぱいという話を聞かせる。②梅干を眼前に呈示する。③検者が食べてみせる。④梅干を手に持たせて食べる態勢をとらせるなどの各場面での唾液量の変動を非分裂病者のそれと比較した。
B)実験Ⅱ:
陳旧性分裂病者を対象とし,検者,起居をともにする同病棟の仲間の患者のそれぞれが,食べてみせるさいの唾液分泌量を比較した。
その結果,
(1)分裂病者ではすつぱい話を聞かすだけでは唾液分泌は増進しない。唾液分泌を亢進することなく,すつぱい話をする者がいる。しかし梅干を人が食べるのを見たり,自分が食べる姿勢をとると,唾液分泌を促進する者が多い。
(2)一見情意鈍麻のいちじるしい陳旧分裂病者でも,人が食べるのを見て,流す唾液の量においては,相手がなじみのうすい医師の場合と,起居をともにする同病棟の仲間の患者の場合とでは明らかな差違を示すものがいる。
以上の結果に基づき,分裂病者の接触,はたらきかけにさいしての問題点について若干の私見を述べた。
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