特集 青年期の精神病理
巻頭言
特集にあたって
笠原 嘉
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
pp.1222-1223
発行日 1977年12月15日
Published Date 1977/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202690
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いつの頃からか,外来や病棟でミドルティーンやハイティーンの患者との応接に時間をとられることが多くなった。しかも彼らは診断上においても治療上においても次々と新種の難問を提出してはわれわれを困惑させた。いや現に困惑させつづけている。
例えば,外来で眼の前に坐っている,まだあどけなさの残る高校生が家庭のなかでは,とくに母親に対しては,想像しがたい暴力をふるう。もし第三者の報告にのみ耳を傾けるなら,分裂病か精神病質をうたがって少しもおかしくないほどである。しかし大てい彼らはそのどちらでもない。さりとて単なるわがまま者の意図的行為でない証拠に,彼らの治療は迂余曲折をきわめ,ときに数年を要したりする。なかには「境界例」という便利な概念が整理上大いに役立つこともあるが,境界例といってもそれほど精神病的でない境界例が多い。
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