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I.はじめに
Chlorpromazineが精神分裂病の治療に使用されて以来(Delay, J.,1952),各種の向精神薬が開発され,分裂病にたいする薬物療法は著しく進歩した。またうつ病にたいしてもimipramineの登場以来(Kuhn, R.,1957)三環系抗うつ薬を中心に各種の抗うつ薬が開発されている。このように内因精神病にたいする薬物療法が広く行なわれるようになってから,内因精神病者と正常者とではこれらの薬物にたいする反応がかなり異なることが経験的に知られるようになった。
すなわち,それぞれの薬物の主作用はさておき,副作用ないし随伴作用とされる眠気,倦怠感,ふらつきその他の自律神経系症状の出現率は,内因精神病者では正常者にくらべて著しく低い場合が多いのである。このように,分裂病者や躁うつ病者がこれらの薬物にたいして正常者よりも強い抵抗力,あるいは低い感受性sensitivityを示すことは,向精神薬療法の実地にとって重要であるだけでなく,分裂病や躁うつ病の病態生理を研究するうえでひとつのいとぐちを与える重要な事実であると考えられる。しかし,従来はこのように重要な事実についての客観的,量的な観察や,その発現機序についての研究はほとんど行なわれていなかった。
筆者らはこの点に着目し,躁うつ病者のimipramineにたいする感受性(大熊・小椋,1973;内田,1969),分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性(古賀,1974;Okuma et al.,1976),各種精神神経疾患者のdiphenhydramine(Benadryl)にたいする感受性(Okuma et al.,1973;川原,1972)などを,脳波を中心とするポリグラフィによって客観的に観察することを試み,脳波や皮膚電位反応などを指標にすることにより薬物にたいする感受性を客観的・量的に表現できることを明らかにしてきた。
そこで本稿では,分裂病者のchlorpromazineにたいする感受性の研究を中心にとりあげ,内因精神病の病態生理にふれながら考察を行なうことにする。
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