- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
精神病のショック療法としてまずSakelによるインシュリン・ショック療法(1933)が,次いでMedunaによるカルジアゾール・ショック療法(1935)が臨床に用いられたが,続いてここに紹介する電気ショック療法がRoma大学のProf. Ugo CerlettiとDott. Lucio Biniによって1938年4月,初めて人間に適用されその成果が1938年5月28日,RomaのAccademia medicaで発表された。この新法はカルジアゾール・ショック療法の欠点を補うと察せられ,彼らはその発表の席である患者にカルジアゾールけいれんを,他の患者で電撃によるけいれんを誘発し,両者を比較検討した結果を報告した。この発表は直ちに6月15日発刊のPresse médicaleやPoliclinicoの7月4日号に紹介され,またProf. Bertolani(Reggio-Emilia精神病院長)によってRivista sperimentale di freniatria e medicina legale delle alienazioni mentali(以下Riv. sper. Freniat. Med. leg. Alien. ment. と略す)の展望欄でも紹介された。一方,この学会発表の要約がCerlettiとBiniの同意を得て,"L'elettroshock"のタイトルで同年のArchivio generale di neurologia e psichiatria(e psicoanalisi)に短く(2頁余り)掲載された。翌1939年にRomaのProf. Fumarolaがドイツ語での本法の紹介をPsychiatrisch-neurologische Wochenschriftの41巻8号に載せ,さらに1940年にはCerletti自身がほぼ同一の内容の論文をドイツ語とイタリア語の2カ国語で書いて,Wiener medizinische Wochenschriftに発表するにつれ,この新治療法は広く世の知るところとなり,わが国でもこれらの発表に教えられて試用されるようになった(上記の論文すべてを入手し,それを読了したが,Prof. Cerlettiの電気ショック療法を紹介しているこれまでのわが国での記述に誤りの多いことを指摘しておく)。わが国では九大の安河内と向笠がCerlettiと別個に電撃療法を試案していたが,その経緯については詳しく知らないので,これ以上ふれない。
ここに訳出した論文(L'elettroshock)はこのような情況のもとで1940年に世に出たのであるが,本法の人間への最初の適用(1938年4月)や最初の学会発表(1938年5月)より2年余り経過しているのは,本文でCerlettiが述べているように臨床応用に当たり万全を期したかったためであり,またCerlettiの主宰するRoma大学精神神経科の総力をあげての多岐にわたる研究活動の一応の成果を待ったからである。
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.