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(I)
電撃療法は今日精神學の領域に於いて,非常に普及されて,外來を訪れる内因性精神障碍の大多數のものが一先ずこの療法の恩恵に與つていると云つても,必ずしも過言ではない。しかも技術的に容易で,計費も低廉であり,その上著効を収めることが出來る。更に,この療法の最も有利な特徴は,副作用及び合併症が殆んどない爲,適用範圍が極めて廣いことが擧げられよう。これらの利點から,最近精神神經科醫以外にも可成用いられて來ていることは注目すべきことである。しかし,實施に當つとは,初めはその惹き起される痙攣發作の烈しさにしぼし瞠目しながらも,やがて,いつとなしに機械的無反省に療法を繼續しているのが大方の實状であろう。たしかに多くの人々が,この療法を全く安全無害に實施し得るものと考えていないにしてち,これまでの續發症や禁忌症に對する見解は,餘りに寛大に過ぎたり,時には嚴格に扱われすぎたきらいがあり,この療法の實施には尚充分な臨床的見地からの檢討が必要と思われるのである。たまたま我々は,最近數カ月の間に,電撃療法に續發したと見做される2例の壓迫性脊椎骨折例を經驗し,そうちの1例は更に肺結核と肺壞疸をも術發したと云うことがあつて,この方面の關心を事新らたなものとしたのであるが,更にその機會に覗知した海外文献から,この療法の全般に亘る多彩な研究の業續に接することが出来た。これらについての詳細は,稿を改めて近く概觀を試みたいと思う。扨て,この療法に脊椎骨折を併發することは,我國の成書にも重要な問題としてしばしば取扱われて來ているのであるが,實際にはそれ程に頻發するものでもなく,むしろ例外的な偶發症に屬するものであろう。我々にとつて,望ましいことは,個々の症例の詳細な記載であるが,これについては大内氏の1例を除いて,明確な報告に乏しいようである。從つてこゝに我々の經驗例についての素朴な記載を試み,我國に於けるこれまでの知見への寄與たらしめたいと思うのである。
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