Japanese
English
研究と報告
Pentazocineにより特異な精神症状を呈した1例
Psychiatric Symptoms Following Administration of Pentazocine. Report of a case
吉本 博昭
1
,
鳥居 方策
1
,
山下 公一
2
,
田中 博
2
,
榎戸 芙佐子
3
Hiroaki Yoshimoto
1
,
Hosaku Torii
1
,
Koichi Yamashita
2
,
Hiroshi Tanaka
2
,
Fusako Enokida
3
1金沢医科大学神経精神医学教室
2金沢医科大学耳鼻咽喉科学教室
3金沢大学医学部神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Kanazawa Med. Univ.
2Dept. of Oto-Laryngology, Kanazawa Med. Univ.
3Dept. of Neuropsychiatry, Kanazawa Univ. School of Med.
pp.41-48
発行日 1977年1月15日
Published Date 1977/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202572
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
Pentazocineは,1959年米国で開発されたbenzazocine系誘導体の合成鎮痛剤で,本邦では1970年6月以来,新型鎮痛剤〈非麻薬〉として,術後疼痛ならびに癌末期患者疼痛軽減など,各種の疼痛に対して日常臨床的に頻繁に使用されている。しかし,副作用の発生率は35%前後と高く29),その中で幻覚を中心とした精神症状は従来軽視されがちであったが,諸外国においてNasaquo15)をはじめとして多数の報告がなされ5,6,19),注目されるに至っている。本邦では,WHOへのペンタゾシン副作用報告29),ならびに村中13),上野28),市橋11)らの産科婦人科,口腔外科および外科領域での論文中に認められるが,精神科領域よりの報告をみていない。なお,pentazocineは,Sandoval21),最近では有川ら2)によって依存性が問題にされ,別な面より注目されている。
今回われわれは,下咽頭・頸部食道癌術後経過中の疼痛に対してpentazocineの投与がなされ,幻視を主症状とするせん妄を呈した1症例を経験した。患者は喉頭発声器官などの摘出術を受けており,筆談による以外には患者自身の陳述は得られず,この点で幻覚体験などの把握は充分とはいい難いが,精神症状の観察とともに継続的に脳波検索を行なう機会を得た。われわれの知る限りでは,わが国の精神科領域よりこの種の報告はなされていないので,われわれの観察事項を記載し,若干の文献的考察を行ないたい。
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.