巻頭言
時間生物学と時間精神医学
稲永 和豊
1
1久留米大学医学部精神神経科教室
pp.338-339
発行日 1976年4月15日
Published Date 1976/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202462
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生物の持つリズム,周期性に目を向けると,それだけでも充分に学問的な研究の対象となるであろう。筆者も30年前ヒトの脳波が示す10ヘルツのαリズムは何故発生しているのだろうかと素朴な疑問をいだいたものである。またその当時身体表面から見られる10ヘルツに近い数ミクロンの振動現象(Microvibration)の存在に気づいて,何故10ヘルツ前後のリズムを示すのであろうかと考えにふけったものである。脳波やMicrovibrationのリズムが何故10ヘルツ前後であるのか現在でも解明されてはいない。
生物の持つリズムは生物体内に存在しているものではあるが,しかし外界からの力によっても変化させられるものである。生物の内部環境と外部環境とが恒常的な状態におかれておれば,生物は比較的安定したリズムを示し続けることが可能である。航空機の発達によって大陸間を短時間に容易に旅行することが日常のこととなった今日では,ヒトの日周リズムcircadian rhythmも旅先で次々と変化を強いられる結果となる。このような外界(外部環境)の変化に応じて生体の内界(内部環境)がどのように適応してゆくかを研究することが必要となってきた。生物学の研究を時間概念を中心にして進めて行こうとする動きは昔からすでに存在していたが,2年前に時間生物学Chronobiologiaという雑誌が創刊され,時間生物学Chronobiologyに関する研究が刺激されることになったのである。時間生物学の研究者の1人であるFranz Halbergという人はミネソタ大学において時間生物学研究室Chronobiology Laboratoriesを主宰している。
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