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書評「平静の心―オスラー博士講演集」
吉利 和
1
1浜松医科大学
pp.1278
発行日 1983年12月25日
Published Date 1983/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109217
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この本の初めに,訳者の日野原先生が書いておられるように,この本をいきなり初めから読み出すと,なかなか難しくて,近寄りがたいという感じがする.そこで私も,先生のお勧めのように,巻末に載っている先生の一文「ウィリアム・オスラー卿の生涯とその業績ならびに思想について」から読み始め,Oslerの生涯,その人間,業績などの概略を頭に入れてから,本文に入ることにした.この際,日野原先生が日本医学教育学会で,多数のスライドを使って話されたOslerの生涯と思想が大いに役に立った.
私の学生時代から医局時代は,日本の医学界はドイツ医学全盛時代で,内科の本と言えば,Mering,Brugsch,Strumpel,そして新しいBergmannの本を専ら学んでいた.しかし私の恩師柿沼先生は,Bergmannの教科書の優秀性を主張されながら,他方ドイツ流の体系的,理論的医学のみでは,医師としては物足りないと言われ,当時はあまり水準が高いと思われなかったアメリカのものに誠に捨てがたいいい面があると言われ,OslerのPrinciples and Practice of Medicineという本の名を挙げられた.日野原先生の文によると,この本の初版は1892年であるが,私が早速入手したものが何年版であったのか失念した.1949年第16版が出たというから,私の読んだのは,これに近いものであっただろう.戦時中上海のものも入手して,粗末な製本に苦しみながら読んだ記憶がある.
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