Japanese
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研究と報告
青年期に好発する異常な確信的体験(第3報)—分裂病類似病態を呈する重症例について
Wahnhafte Erlebnisse in der Adolescenz: über die schweren Fälle, die schizophrenieähnliche Bilder zeigen
小出 浩之
1
,
石川 昭雄
1
,
大磯 英雄
1
,
酒井 克允
1
,
村上 靖彦
1
Hiroyuki Koide
1
,
Akio Ishikawa
1
,
Hideo Oiso
1
,
Katsumasa Sakai
1
,
Yasuhiko Murakami
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
1Psychiatrische Klinik der Universität Nagoya
pp.155-162
発行日 1975年2月15日
Published Date 1975/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202276
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I.はじめに
われわれは,十年程前より思春期から青年期に好発する異常な確信的体験について研究し,すでに〈思春期妄想症〉〈妄想様固定観念〉と呼んだ病態について報告し1),また思春期状況について考察した2,3)。ついでこれらの病態構造の2つの契機である関係妄想と身体異常感のうち,主として前者が前景に立つものを考察の対象とし,先の第1報4)において〈忌避妄想〉と名づけ,分裂病にしばしばみられる迫害妄想と区別してその体験構造を論じた。さらに第2報5)においてそのバリエーションとして〈自己の状態がうつると悩む病態〉をとりあげ考察した。
さてわれわれが前2報において報告し〈忌避妄想〉と呼ぶことを提唱した病態は,自己の身体が不本意にも他者に不快感を与え,他者によって忌避されていると確信すること,それを他者の言動・状態を通じて関係づけの形で体験すること,このように迷惑をかけている自己について自責的に悩むこと,多くは思春期に発症し単一症状で経過することを主なる特徴とするものであった。この種の臨床的単位を設定しようとするさいには当然のことながら,基本的には同種の病態構造を備えているにもかかわらず,以上の定義からいくつかの点で逸脱する症例を見出すことになる。今回は,病態がより重篤な症例を選び,考察の対象とした。それは,これら重症例のほうが,その病態的特徴をより鮮明に示しており,その意味で〈忌避妄想〉というわれわれの提唱した概念の拡大と深化に役立つと考えたからである。
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