Japanese
English
特集 精神分裂病の遺伝因と環境因
分裂病の発症条件について
On the Conditions of Schizophrenic Manifestation
小出 浩之
1
Hiroyuki Koide
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
pp.763-768
発行日 1979年7月15日
Published Date 1979/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202961
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
ここで私が提起するのは,分裂病の発症条件についての3層の見方である。それは,一口に分裂病といわれる病態のどの層をわれわれは問題にし,治療の中でどの層にかかわっているかを明らかにするためである。
まず第1層は(すでに発病している)病者を病的世界へ陥らせる契機である。すでに発病している病者とて,四六時中病的世界に陥っているわけではない。彼らを病的世界へ陥らせる契機は治療者のほんのちょっとした態度によることも多い。まず次節で病者を病的世界へ陥らせる直接の契機について論及する。
ついで第2層はいわゆる発病状況である。ここでは病者が出会っているおおまかな困難性が問題となる。その困難性に基づいて,病者はほんのちょっとした契機で病的世界へと陥る。この第2層は,第1層が微視的,直因的であるのに対し,中視的,近因的である。
最後に第3層は発病状況を発病状況たらしめている巨視的,遠因的条件である。すなわちここではいわゆる病前性格が問題となる。もちろんこの3層はそれぞれ無関係なものでなく,緊密に関連しあっている。その意味ではこの小論は,この3層の有機的関連を統一的に把握する試みともいえる。そこにまたこの小論が単に「生活史」のみでなく,病態をも包み込まなくてはならぬ由縁がある。以下症例に添って各層を順を追って考察していくことにする。
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.