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I.はじめに
近年,各研究分野において,家族集団を1つの機能単位として取り上げようとする動きが活発になってきた。これにはいくつかの理由がある。まず第1に,家族集団は社会において,取り扱いやすい1つの単位組織だということである。単位として取り上げることのできるものには,家族のほかに個人および社会があるが,家族をまず取り上げようとする理由の第2は,この両者と相互に関与し合う重要な位置を占めることである。いうまでもなく,家族は社会における福祉追求の第一次的担い手であり,家族員の健全な結合は,その小集団で維持し,安定をもたらし,また成員それぞれの生活行動発展の基盤となり,福祉を追求する源となる。
現代社会では,工業化や都市化が進行するにつれて,教育・職業・結婚などの機会を求めて,人間の社会的移動が激しくなっている。その結果,核家族化が進展し,とくに過疎地域における老齢者家族としての核家族的形態の維持に問題を生じている。わが国の高齢者世帯(男65歳以上女60歳以上の者のみで構成されるか,または,これに18歳未満の者が加わった世帯)数は,昭和30年を100.0(425千世帯)とすると,45年は281.4(1196千世帯)と激増し,総世帯に占める高齢者世帯の割合は,35年2.2%,40年3.1%から45年には4.0%へと増加している。高齢者世帯の中でも問題の多い高齢者単独世帯については,30年の262千世帯を100.0とすると,35年110.7,40年169.5,45年には233.6(616千世帯)と増加も加速度的になってきている。厚生省による一人ぐらし老人の健康状態の調査では,「弱い,病気がち」と回答した者が35.7%もあり,「床につききり」が1.6%,世話を必要とするにもかかわらず,世話を受けられない者が21%にも達するという(厚生行政基礎調査資料,および老齢者実態調査,昭46)。
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