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I.はじめに
失読で比較的多いものは失語性失読であり,その他浜中ら1)は頭頂葉性失読を記載している。しかし,症例としては少ないが,読みの障害として限局されたもので,後頭葉失読または純粋失読といわれるものがある。Nielsen2)は前頭葉障害で失読症状が得られたと報告したが,これは失行にもとづく二次的なものと考えられている。その他読字障害として,難読(Dyslexia)やzerbrale Asthenopieのように一種の視覚疲労と考えられるもの,書字言語の発達過程のいわゆる先天性語盲(安斉ら3))などが取り上げられている。
純粋失読症は後頭葉性失読症,純粋語盲,皮質下性失読症,純粋書字盲,弧立性失読症,視覚性失読症の呼び方が行なわれている。今世紀の初め,すでにその症候論,特徴,解剖学的問題が討論されてきたが,わが国においても1933年三浦4)はこれについての歴史的展望と症状の記述を行ない,また1965年大橋5)がその総説を記載している。欧来においても第二次大戦前には純粋失読の剖検例はわずかに9例しかなかったが,Hoff,Gloningら6,7)は多数にのぼる剖検例,手術例を報告し,左きき患者の例とともに半球優位の問題や純粋失読が生じうる病巣の部位論の詳細な検討を行なっている。また純粋失読では色彩失認を合併することが多いとされ,Rubens8)やGloningら9〜11)もこの点を記載している。近年,従来いわれてきた失認という概念にBayら12)は疑問を投げかけ,この失認に対して特殊な感覚障害とか精神機能の抑圧などを取り上げている。Geschwindら13〜15)のいう巣症状(失語,失行,失認など)が各半球の知覚連合間の切断という考え方もかなり有力な立場をとるようになってきた。
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