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抄録 精神分裂病の病型分類について,日本などアジアでは,欧米に比べて単純型や緊張型が多く,妄想型は少ないなど,分裂病の病像が違うといわれていた7,8)。しかし,欧米と日本の精神科医側の病型の分類基準が違っている可能性もある。今回,西ドイツと日本の両国において,ほぼ同時期に入院し,発症年齢や罹病期間に差のない分裂病者の病歴を用いてこの点を調べた。〔対象〕チュービンゲン大学神経科に1984年度に入院した150例と,慶応大学病院精神神経科および都下精神病院に83〜85年度に入院した178例。分裂病の診断と病型分類は,両国とも各担当医および指導医がICD-9に基づき行った。〔方法〕Ⅰ.両国の担当医が分類した病型を比較する。Ⅱ.西ドイツ例の病歴から,日本の精神科医が病型分類し,西ドイツ側の分類と比較する。〔結果〕Ⅰ.1)日本例は,①破瓜型(295.1)39.9%,②妄想型(295.3)28.7%,③緊張型(295.2)8.4%の順に多く,西ドイツ例は,①妄想型48.7%,②分裂情動型(295.7)15.3%,③残遺分裂病(295.6)14%の順であり,日本では破瓜型や緊張型の分類例が有意に多く,西ドイツでは妄想型や分裂情動型の分類例が有意に多かった。2)破瓜型に関して,西ドイツ例のほうが発症年齢がより低く,慢性に発症した例で,入院時の主症状が自発性減退の例の割合が多い傾向があった。3)妄想型に関して,日本例のほうが発症年齢がより高く,発症時の主症状が幻覚妄想の例の割合が多かった。Ⅱ.の結果も1)と同様であった。以上より,今回の両国の病型分類の違いは,主に精神科医の分類基準の違いによるもので,破瓜型や緊張型は西ドイツではより狭義に分類されており,反対に妄想型や分裂情動型は日本ではより狭義に分類されていると言えた。この違いの主因として,両国の分裂病症状のとらえ方の相違があり,それが両国の精神医学の成り立ちによる点を,Kraepelin, E. を中心に考察した。
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