Japanese
English
特集 痴呆の臨床と鑑別
痴呆とその時間構造の障害
About the Disturbance of the Time Structure in Demence
越賀 一雄
1
Kazuo Koshika
1
1大阪医科大学神経精神医学教室
1Dept. of Psychiatry, Osaka Medical College
pp.351-355
発行日 1973年4月15日
Published Date 1973/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202004
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
本論文においてはすでに発表した語義失語患者の1例について報告し,とくにその対話形式の特有な症状を述べ,その所見から筆者は真の現在,W. Sternのいうerlebte Gegenwart,AhrensのPräsenszeitには過去から未来への絶えざる進行の面と,過去を保存し,止まって未来を待機する停止の面があり,そこに現在のもつ矛盾的(paradoxical)な性格,いわばZeitparadoxがあることを指摘し,時が直線的であるとともに,ある空間的な拡がりをもっていることを論じ,かかる矛盾した構造をもつ現在が,その拡がり,延長という場所的性格を失い,passivem,receptiveな面を失い,単にaktive,expressiveな面のみとなり,単なる一点の絶えざる進行にすぎなくなるとき,先に述べたStörringのいう一軌道性(Eingleisigkeit)を呈し,その談話はまったく一方的な止まることなきRededrangの様相をおび,その対話の形式が失われ,あたかもMonologにも似た形式とならざるをえないのである。
Copyright © 1973, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.