巻頭言
未来の精神治療薬
稲永 和豊
1
1久留米大学医学部神経精神科
pp.494-495
発行日 1972年6月15日
Published Date 1972/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201898
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日本の春頃の気温だときいて冬服と合服を準備し,また下着もそのつもりで持って行ったが,太陽の国メキシコの11月下旬の日中は日の光が強く,かなり暑い。しかし夕やみがせまって来るとひえびえとした空気につつまれるようになる。1日のうちに日本の四季が経験されると誰かが言っていたが,それ程ではないにしても気温の変動はかなりひどい。メキシコ市では酒に酔い易いので注意する方がよいときかされていたが,たしかに少量のビールでもふつうより酔いがまわり易い。またはじめの2〜3日はゆっくり歩かないとすぐ胸さわぎがするようだ。やはりメキシコ市は2,000メートルをこえる高地にあり,空気が稀薄なために身体の調子がおかしい。メキシコの人々があせらず急がず悠然としているのも生活の知恵がそうさせたのかもしれない。
昨年の11月28日から12月の4日まで1週間にわたってこのメキシコ市で第5回世界精神医学会が開催されたが,その第2日目の午後“Drogas del Futuro”(Drugs of the future)と題したシンポジウムが会場の一つで行なわれた。このような学会で未来を語るというのは楽しい企てであるが,一面では現在の精神治療薬にあきたらなくなったこと,さらに現在の精神薬物療法に対して反省の動きが出てきたことのあらわれでもあろう。
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