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I.はじめに
Meprobamateがminor tranquilizerとして臨床的に使用されるようになってからすでに15年以上を経過している。この間多くの治験報告がだされ,精神料のみならず広く臨床各科で使用されたことはいまだ記憶に新しい。しかし,あらためて記述するまでもなく,1956年Lemere1)によってmeprobamateの禁断症状が指摘されてから同様の症例が内外ともに相次いで報告2)〜14)されていることは周知の事実である。本邦では,医師による本剤の処方は激減したが,市販のルートから容易に入手できるために常用者がかなり多いのが現状であり2),加藤ら12)による精神安定剤,催眠剤の薬物依存に関する統計的研究および佐藤13)による精神安定剤とその対策にはこうした実状に対する警告が含まれている。一方,米国では,Massachusetts Mental Health CenterのGreenblattら15)はmeprobamateの薬物効果について26編の二重盲検法による治験例を検討したところ,meprobamateがplaceboより有効であった成績はわずかに5編にすぎなかったことを明らかにし,当初いわれた本剤の無害性は十分確認されなかったばかりか本剤のもつ危険な副作用はすでに動かしがたい事実であると強調している。さらに,マサチューセッツ総合病院では1969年に年間,実に32kgの本剤が与薬されていることを記載している。Meprobamateが身体依存を形成しやすいこと,しかもその禁断症状の発現過程がアルコールおよびbarbituratesと類似していることが指摘されながら4)13)4)17),本剤の禁断症状の推移をこれらの物質と対比させて詳しく検索した報告はきわめて乏しい。
今回著者らはmeprobamate禁断後の脳波を数時間ごとに継時的に記録したところ著明な光刺激過敏性の脳波像変化をみせ,ついでせん妄状態に移行した1症例を観察したので,脳波像の変化ならびに精神症状の推移についてとくにアルコール中毒禁断症状の推移との関連性において考察を加えたい。
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