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最近の新聞紙上で医学に関係のある記事をよくみかける。しかもその記事の多くは,医学研究の輝く成果ではなくて,医学関係者が被告席に立たされた告発記事である。近年の話題であったサリドマイドによる畸型形成説やSMONのキノホルム病因説などは,ある意味では問題の本質を象徴しているようにみえる。サリドマイドの場合は製薬会社やこの実験に関与した医学研究者の過失であったことは否定できないであろう。この不幸な事件のために,その後の薬物の副作用の検定には必ず胎児に対する影響が調べられるようになったことは,何をもっても代えられない高価な代償によって得た大きな進歩といえる。しかしそれだからといって,過失のすべてが清算され,過失が消滅するものではない。
キノホルムがSMONの病因であることは,現在では多くの人が信じており,そのために被害者は国,製薬会社および医師を相手とする損害賠償の訴えを起こしている。しかしこの事件について感じることは,本件がわが国においてはじめて起こることができたのではないかという疑問である。SMONの起こっているのはキノホルムを2g以上も服用した人であるということであり,普通使用量として記載されている0.6g程度の量ならば起こらなかったと逆の結論もできそうである。外国でキノホルムの発売停止の処置がとられたという報に接しないところをみると,外国の医師は本邦の一部の医師のように,大量のキノホルムを長期にわたって投与することはないという皮肉な結論もでてくる。どのような薬物も使用量を誤れば毒物となることは,医学に無知な素人でも理解するであろう。このばあいキノホルムがSMONの唯一の病因であるとしたならば,医師が責任の大部分を負わねばならないことは必然的な結論となってくる。
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