特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第1章 精神医学の2つの系譜—グリージンガーとシャルコー
内村 祐之
1,2
1東京大学
2日本学士院
pp.502-510
発行日 1970年6月15日
Published Date 1970/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201628
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初期の精神医学史の瞥見
私は今後16〜17回にわたり,精神医学の基本問題についての綜説的展望を試みたいと思う。しかしそれは,精神医学に対する考え方が,時代と共に,いかに進歩変遷したかを見ようとする単純な目的に出づるものではない。私は,各時代における代表的研究者が,いかに精神医学を捕えたか,そして現代の精神医学が,これらの人々の研究から,いかなる影響を受けているかを示したいと思うのである。
精神医学の現状を,混沌としたものと見るか,著しく進歩したものと見るかは,見る人によって異なるであろうが,私自身はこれを,成長過程における混沌状態と見る。近年『栄える精神医学の危機』(1967年)とか,『過渡期の精神医学』(1969年)とか題する著書が出版されているが,このような題名の著書は今までになかったものである。このことも,私と思いを同じくする人々の少なくないことを示すものであろう。それゆえに,今後の進歩のためには,過去の著名な人々の思想を十分に知って,その長所を探ることこそ肝要だと私は考える。これが,私をして,あえてこの展望を企てさせた主な動機である。
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