人とことば
公害問題と青年
永田 捷一
1
1岐阜大・衛生学
pp.185
発行日 1969年4月15日
Published Date 1969/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203845
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最近,公害問題は,何らかの形で,毎日のように新聞紙上に出ている.私の教室でも,河川の汚濁と取り組んでいるが,これについて,最近感じることがある.それは,公害問題に対する青年層の関心が,一般的にみるときわめて低いことである.ときどき,これは,どうしてであろうかと考えてみる.
ご存知のように,岐阜市内を流れる清らかな長良川において,岐阜城の天守閣がそびえる金華山を背景に繰り広げられる鵜飼は,芭蕉が "おもしろうてやがてかなしき鵜飼かな" と詠じたように,なかなかあじわいのあるものである.人口40万程度の中都市の町の中で,川に釣糸を垂れることができるのは,岐阜市を除いて今日では数少ないことであろう.ところが,この清流の長良川でも,年ごとに鮎を始めとして魚獲高が減ってきたと,鵜匠をはじめ漁業関係者は嘆いている.のみならず,下流では,魚体に異臭が着いて,市場での商品価値にならずに,問題となっている.この長良川は,現在ダムは1つもなく,岐阜から上流では全国でも珍しく,水流,川の地形,水中や流域の動植物,風景などが,ほぼ昔のままを保っている日本の名川である.学問的な意味からも,このまま汚さないで人工的な手を加えず,そのまま子孫へ渡したいものだと願っている.
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