特集 医療危機と精神科医—第6回日本精神病理・精神療法学会 討論集会をめぐって
いくつかの疑問
三好 郁男
1
1神戸大学医学部精神神経科
pp.112-114
発行日 1970年2月15日
Published Date 1970/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201573
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討論集会が終わった直後は,紙面をかりて述べておかねばならぬことが多くあると思い,そうせねばならぬという強い欲求を感じた。しかし2カ月近く経った現在,いろいろな点で当時と情勢が変わってきている。それで筆をとるのは気が重いのだが,200人余の反対意見を無視してまで,あえて「自己の責任において」討論集会に切りかえる決定をした今年の運営委員会の責任は——わたしは決定そのものには参加することができなかったがそれは別として——いまだにわたしを含めて委員会の客人に残されていると思う。討論集会の成果を評価し,あるいは批判し,反省し,それらをどんな形にせよ今後の建設的な資料として役立つように(とくに参加しなかった会員に)報告することもその責任を果たすひとつであると思う。それであえて以下にそういう意味でわたし個人の感想ないし見解を記す。
今回の討論集会は,集会実行委員会の作った資料による第1,第2,第3(若手)グループという三グループ間の対話,論争という形式で行なわれた。実行委員会は数百人になると予想される集会で混乱なく,みのりある討論を進めるためのルールとして前記のような方法をとったと解するが,わたしは今回のせっかくの集会が金沢の総会ほどの強い迫力を持ちえなかった一因は,こういう人工的で図式的な三分法形式にあったと考える。具体的には何人かの人が各グループに属する代表として発言し(あるいは発言を求められ)たが,そういう形を取ればとるほど,見えてくるのは各グループに問われている問題点ではなくて,それぞれの「個人」の見解であり,その相違点であり,問題の討議は深まってゆかなかった。
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