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過日,日本精神病理・精神療法学会,第6回大会にさいしては,異例なことながら,大会運営委員会の決断によって,学術集会が全面的に討論集会に切り換えられ,それを促進した討論集会実行委員会の提起した《今日的な問題》としての"精神科医にとって精神病理学および精神療法とは何か"というテーマをめぐって,二日間,七時間に及ぶ討論がくりひろげられました。
さて,その間,京大精神科の新進新井清君とともに議長の大役を引き受けましたわたしは,なしうるかぎり呼吸を合わせて,この討論集会を金沢学会をのりこえるための歴史的な意味をもった,実り多いものにしたいと志し,技術的には代表的な討論はなるべく時間を惜しまず煮つめていただく方向へリードし,出席者もそれに参加していただくように促しながら,ともに考え合うことができるようにと按配したつもりです。にもかかわらず,この討論集会の《終末》は,学会の解体というやや唐突な宣言によって,討論集会実行委員会から《断絶》をもってしめくくられました。この点,議長として,出席者の胸にうつぼつとして生じたにちがいない不満の感情を十分に取り上げる時間をもたなかったことを残念に思っています。おそらく,あの《しめくくり方》をもって,議長の不手際を責めたくなられた方々もいられたことだと思います。新井君は,この点について,「一足とびに解体にいかぬとも,今少し,段階的発展的解体の道があったのではないかと,私自身は考えておりますが,討論内容の質と結末との間にある落差には,私ならずとも当惑を覚えた人が多かったことでしょう。そのような不満部分が,最後の議事の進め方という技術的な面をピックアップして,不満を投映するからといって,議長団として自己批判する必要はあるまいと居直る次第です。」と,ともに負い目を感じつつも,あれ以上のことはできなかったことを認め合っています。
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