Japanese
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研究と報告
薬物依存的な医師・患者関係—長期服薬本位神経症患者の調査から
Drug Dependency in Psychiatrist-Neurotic Patient Relation
小此木 啓吾
1
,
延島 信也
1
,
岩崎 徹也
1
,
鈴木 敏生
1
,
北田 穣之介
1
,
川上 伸二
1
Keigo Okonogi
1
,
Nobuya Nobushima
1
,
Tetsuya Iwasaki
1
,
Toshio Suzuki
1
,
Jonosuke Kitada
1
,
Shinji Kawakami
1
1慶応大学医学部神経科教室
1Dept. of Neuropsychiat., Keio Univ. School of Med.
pp.550-556
発行日 1969年7月15日
Published Date 1969/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201497
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Ⅰ.まえがき
現代の神経症治療では,薬物療法が重要な役割をはたしているが,それと同時に,適切な病気理解と治療理解を患者に与え,患者が自分の病気に対して適切な態度をとれるような精神療法的はたらきかけが与えられねばならない。そして,投薬および服薬という,現代医療にとつてもつとも日常的でしかも一般的な医師・患者の交流様式も,精神療法的見地から再構成されなければならない。ところが実際の診療状況では,さまざまの現実的制約が,このような意味での理想的な神経症治療の実践を妨げているのも否定しがたい事実である。たとえば現行医療制度は,服薬が患者の病気治療にとつて,どのような位置づけにあるかについて,われわれが患者に納得のゆく説明を与える十分な時間をとることを許さない。そしてわれわれは,精神的な交流やはたらきかけの必要を痛感しながらも,そのための現実的なゆとりを得られない無力感や焦躁感に苦しみ,この矛盾からの救いを投薬にみいだそうとする。ところが,神経症患者の半数以上のものは,身体的な訴えを主とし,その結果自らも「身体的な病気ではないか」との疑問や不安をいだいているために,身体的な治療を受けることで満足し,精神面へのはたらきかけには,抵抗を示すものが多い。まして投薬と服薬が患者の不安を軽減し対症療法的な効果をもたらす場合には,われわれはそれによつて医師としての役割意識を満たし,患者も医師への期待が満たされるために,医師・患者は,ともに精神療法的な交流から疎外したかたちでの相互的充足と安心をみいだすことができる。
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