Japanese
English
研究と報告
症例検討よりみた薬物の効果判定の問題—Carpipramineの臨床検討から
An Evaluation of Eflects of Psychotropic Medicine through Case Studies : A Clinical Study of Carpipramine
吉川 武彦
1
,
中村 征一郎
1
,
根岸 敬矩
1
,
竹内 竜雄
1
,
矢野 徹
1
,
米沢 照夫
2
,
亀井 清安
3
Takehiko Kikkawa
1
,
Sei-ichiro Nakamura
1
,
Takanori Negishi
1
,
Tatsuo Takeuchi
1
,
Toru Yano
1
,
Teruo Yonezawa
2
,
Kiyoyasu Kamei
3
1千葉大学医学部神経科
2国立精神衛生研究所
3榛名病院
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med., Chiba Univ.
2National Institute of Mental Health
3Haruna Hosp.
pp.843-850
発行日 1968年10月15日
Published Date 1968/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201399
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I.はじめに
Phenothiazine系薬物の登場以来,旧来の精神科治療体系のなかに重要な地位を占めるようになつたいわゆる「特殊薬物療法」は,その後もますますさかんになり,初期のchlorpromazine,levomepromazine,perphenazimeなどのみならず,抗うつ剤としてのimipramine系の薬剤,あるいはごく近年のbutyrophenone系の薬剤にいたるまで,きわめて多岐多様にわたつている1)。
しかし,こんにちにいたるまで,これらの薬物の臨床効果については語られることは多くあつたといえても,その効果判定そのものに対しては十分に語られたとはいいがたい。そもそも,薬物の効果はその薬物のもつ特異的・非特異的薬理学的作用の問題とともに,とくに精神科領域における使用にさいしては,治療者・患者関係のなかの一存在としての薬物という観点を導入して語られなければならない。この一面を明らかにしたのがplacebo-reactorの問題であり,placebo-reactorの精神力動を解明する方向から効果判定の一面が明らかにされつつある9)。しかし,このplacebo投与の問題は,日常の臨床場面ではかならずしも容易に行ないうるものではなく,とくに二重盲検法,三重盲検法にいたつては,それ自身がもつ実験的色彩の強さに臨床医は気遅れしがちである。
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