Japanese
English
研究と報告
多彩な精神症状を呈した急性間歇性—ポルフィリン症の1例
Ein Fall von akuter intermittierender Porphyrie mit vielfältiger psychischer Symptomatik
藤森 英之
1
Hideyuki Fujimori
1
1東京都立松沢病院
1Städtische Psychiatrische Anstalt Matsuzawa in Tokio
pp.744-749
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201384
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
Porphyrin症(ポ症)は,臨床的に皮膚症状,腹部症状,神経症状あるいは精神症状を呈し,生化学的にPorphyrin体(Uroporphyrin,Coproporphyrin)やその前駆物質であるPorphobilinogen(PBG)とδ-Aminolaevulic acid(δ-ALA)の生成および排泄増加をきたす一群の代謝疾患である。Gunther13)は,1911年,臨床的に初めてこの疾患に注目し,当時,これをacuta,acuta toxica,chronica,congenitaの4型に分類した。しかし,現在ではGunther以来の臨床的分類に代つて,Watsonらの分類25)(erythropoietic Porphyriaとhepatic Porphyria)が一般に用いられている。
Erythropoietic Porphyriaは,赤血球の前段階である赤芽球にいちじるしい酵素欠損があり,この赤芽球の発育は,Porphyrin合成のさい,その先天性異常により障害される。したがつて,抵抗力の弱い赤血球が形成され,その寿命も短く,脾腫や溶血性貧血を起こす。このさい,異常なPorphyrin合成の結果として,赤芽球や赤血球に多量のUroporphyrin IとCoproporphyrin Iが含まれ,それらは血中に増加する。増加したPorphyrin体は,一方で尿中に排泄され(赤色尿),他方で皮膚露出部に水泡,色素沈着,潰瘍などを形成する。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.