特集 うつ病—日本精神病理・精神療法学会(第4回大会シンポジウム)
Ⅱ部 Schuldgefühl(罪責感)
総括
宮本 忠雄
pp.389
発行日 1968年5月15日
Published Date 1968/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201335
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(総括―誌上追加) うつ病にとつて罪責感の意義は,精神分裂病にとつての被害感の意義に比較されるほど重要なものであるが,日本では,かつて高橋(義夫),井上(晴雄)らが先駆的な学会報告を行なつている以外には,罪責感の問題が正面からとりあげられたことはなかつた。その理由はいろいろ考えられるが,われわれ日本人にとつて宗教や罪の問題はむかしからあまり得手でなかつたという一般的な理由のほか,欧米とはまつたく異なる宗教的背景をもつ日本では本来の罪責感や罪業妄想はほとんど問題にならないとして臨床上軽視されていたためもあるかもしれない。むろんわれわれのところでは罪責感の現われかた,表現のされかたが欧米のそれと違つていることは十分考えられるところであるが,しかし現われかたの違いこそかえつて,この体験における可変なものと不変なものの把握をとおして現象の本質に接近できる道を拓いてくれるのではなかろうか。今回のシンポジウムにさいして新福教授が罪責感を主題の一つに選ばれたのも,おそらく上記のような内意があつたのではないかと思われる。
ところで,この主題に参加された4人の発言者は,一般的公募に応じたかたがたではあつたが,結果的には罪責感の問題をそれぞれ異なる角度から解明したかたちになり,これによつて罪責感の概略がある程度論じられたとみてよかろう。
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