回顧と経験 わが歩みし精神医学の道・12
国民優生法の制定をめぐつて—民勢学的調査と双生児研究
内村 祐之
1,2
1東京大学
2日本学士院
pp.440-448
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201212
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東京に転任して戸惑つたことは,大学教授本来の任務である教育と研究とのはかに,学識経験者の代表として,中央官庁から委員や嘱託を依頼される機会の多いこと,また専門の分野では,精神衛生運動の中心とならざるを得ないことであつた。
もともと私は,他人との接触がそんなに不得手ではないし,また,誰とでも胸襟を開いて語り合うことができるが,この性質の半ばは後天的なもので,学生時代の寮生活や,ティームプレーを重んじるスポーツの経験から習い覚えたものである。本来の性質はむしろ気弱で,自らに対して自信がもてず,また多分に内弁慶の気味があるので,馴染みの薄い人々の間にはいつて自己主張をすることは,とかく気おくれがして,好むところではないのである。
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