特集
優生手術に関する優生保護法の解説
斎藤 鐐一
pp.6-10
発行日 1953年7月1日
Published Date 1953/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200380
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優生手術ということ
一昨年の秋,政府が母体を保護するために受胎調節普及対策を樹立してから,受胎調節普及はさかんに論議され,その運動は益々盛大となつてまいりました.折角妊娠しても,母体をそのために弱くするような病気があるとか,悪質な遺伝性の丙気を持つているときには,人工妊娠中絶をすることになります.ところが人工妊娠中絶をしますと,その処置のために死亡したり,重症になつたり,その他いろいろの故障で長期間病床に寢なければならないという直接的な障害ばかりでなく,その後に惡性のいろいろな病気になる等ま間接的な障害が注目されるようになつて,産婦人科医師の中からも人工妊娠中絶の適用範囲を嚴格に考え,受胎調節の普及にもつともつと本腰を入れるべきであるという注目すべき意見がでてきたのであります.
この受胎調節とは違つて,一時的ではなく一生涯妊娠しない目的で手術するのが不妊手術であつて,もう今後子供はいらない人が行うものであります.この不妊手術を法律上,優生手術といいます.「生殖腺を除去することなしに,生殖を不能にする手術で,命令をもつて定めるものをいう」と優生保護法(以下法と記します)第2條第1項に定義してありまして,その術式は,優生保護法施行規則(以下施行規則と記します)で
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