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研究と報告
慢性精神分裂病者における薬物療法の限界と臨床的意義について—Chlorprothixene-diazepam併用療法をもとにして
On Some Clinical Meaning of Pharmacotherapy by Chlorprothixene-Diazepam-Combination for Chronic Schizophrenia
柴原 堯
1
,
錦織 透
1
Yutaka Shibahara
1
,
T. Nishigori
1
1京都府立洛南病院
1Kyoto Prefectural Mental Hospital "Rakunan"in Uji
pp.754-758
発行日 1966年9月15日
Published Date 1966/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201066
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慢性精神分裂病者にChlorprothixene-diazepam併用の薬物療法を行ない,その結果えた臨床効果をもととしてこれらの患者に対する薬物療法の限界とその臨床的意義について考察した。
(1)使用対象は長期間の入院を経過し,なお執拗,偏執的に心気妄想,身体幻覚,作為体験などとともに拒絶症,不安焦躁,心気症様症状を示す慢性分裂病者23名(男)で,使用薬剤はchlorprothixeneとdiazepamである。
(2)使用量はC200mg+D15mg(1日量)からC600mg+D40mg,使用期間は72日から104日,使用方法は1日3〜4回分服,経口投与,漸増法をとつた。
(3)C-D併用療法によつて,これらの患者の内面的構えの転換が認められ,それは多幸化として要約され,患者は自己の異常体験に対して心気症的傾向,偏執的傾向を示さず,安定して安静,陽気,快活,活発となった。
(4)このC-D併用療法における臨床効果としての多幸化という構えの転換は,しかし従前のphenothiazine系誘導体,butyrophenone系誘導体による臨床効果と同様に,慢性分裂病者においてはただ単に水平的安定状態,反社会的行動の消褪をもたらすにすぎず,さらにこれによつて得られた状態は患者の内的世界を薬物という透過膜を通じた第3の世界に固定するものであつて,それはかえつて患者の自由な内省,洞察をもとめる立場を制限し,患者をReifungよりもDomestikation,Stabilisierungに近づけるものである。
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