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講座
人工血液—研究の現況とその問題点
Current Situation and Problem of Artificial Blood
関口 弥
1
Wataru Sekiguchi
1
1東京大学医学部第2外科学教室
12nd Department of Surgery, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.903-908
発行日 1971年11月15日
Published Date 1971/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202321
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はじめに
近年,ショックの病態生理が解明され,輸血の重要性が認識されて以来,我々は出血量と等量の輸血を行うことをたてまえとして手術を行って来た。ところが,売血制度の廃止に伴い血液確保が困難となったこと,それに加えていっこうに血清肝炎が少くなっていないという実情から,可能なかぎりplasma expanderにその代用をまかせざるをえなかった。しかるに現在使われているplasma expanderには,赤血球の持つ呼吸ガスの運搬を中心とした重要な作用が欠けており,従って末梢組織のanoxiaの改善のためには,どうしても酸素運搬能のあるplasma expander——人工血液——の開発が望まれることになる。
人工血液を求める研究は二つの面から進められて来た。一つは純合成物質を得ようとする方向であり,もう一つは天然のoxygen carrier,すなわち赤血球またはHbを利用しようとする方向である。人工臓器開発途上における宿命的な一つの命題,すなわち材料に対する生体の反応という壁のために,共にまだ完成されていない,というよりも,現在では,人工血液というものが,可能であるかどうか,まだはっきりいえない段階なのである。この小文では,人工血液を求める研究の歴史,現状をのべ,その問題点をさぐってみたいと思う。
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