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昨年5月,西独ErlangenでDemling教授主催のもとに開かれたInternational Symposium “Operative Endoscopy”において,上部消化管出血に対する非手術的止血法がテーマの1つとしてとりあげられたが,その際,出血源を食道静脈瘤とその他の上部消化管出血巣,殊に出血性消化性潰瘍とに大別して,それぞれに対する止血対応策が論議された.このSymposiumには西独のほか,米国,英国,フランス,オーストリア,日本からの専門医が招待されて論議をたたかわしているので,このSymposiumの概要をまとめて,外国の現況紹介としたい.
まず食道静脈瘤対策であるが,Kiefhaberらはピトレッシン注射療法,バルーン圧迫療法,あるいは壁硬化剤注入療法など他の止血療法が無効であった127例の急性食道・胃静脈瘤出血に対してneodymium(Nd)―YAGレーザー光凝固療法を試み,116例(91.3%)の止血に成功し,成功例では以後緊急手術やバルーン圧迫療法は必要としなかったと述べ,さらに消化性潰瘍の顕出血例にも外科医と協力しながら本法を応用すれば,出血による死亡率を下げられる可能性があると述べた.また,食道・胃静脈瘤出血例のうち本法による止血成功例116例中75例は顕出血例であったし,軽度出血例は41例に過ぎなかったと述べ,顕出血に対する本法の有用性を強調した.Denckらは858例の食道静脈瘤出血例に対して様々の止血対策を試みた結果,バルーン圧迫療法では31例中15例(50%)が死亡し,10例(30%)に再出血をみ,バルーン圧迫療法の成績が最も悪かったが,内視鏡的壁硬化剤注入療法では647例中死亡例109例(16.8%),再出血例101例(15.5%)とその成績は著しく改善されたと報告した.したがって,本法は食道静脈瘤出血,殊に軽度の限局性の出血に対しては有用であり,また,余り大きくない食道静脈瘤に対しては,あらかじめ本法を施せば出血予防療法としての意義もあると強調したが,同時に,胃静脈瘤や非常に進行した食道静脈瘤からの出血に対しては本法は余り有効でなく,また出血予防療法としての意義も少なかった.そこで最近1年半程の間に,本法に加えてLunderquistに準じて経肝的壁硬化剤注入療法を併用しているが,29例中21例の食道静脈瘤の止血に成功したものの,5例は後日肝昏睡を来たして死亡し,2例に重篤な再出血を認めた.したがって,この併用療法にはいまだ論議の余地があり,肝不全の予測される場合には,この併用療法は勧められず,内視鏡的な壁硬化剤注入療法をくり返し行うほうがよいと結論した.
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