特集 近接領域からの発言
第52回関東精神神経学会懇話会
討論
内村 祐之
1
1神経研究所
pp.15
発行日 1964年1月15日
Published Date 1964/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200655
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私は仕事のうえでは,なるほど七条さんの言葉でいうと,Morphologieをやつているということでもありましよう。それにもかかわらず私が40年,50年やつてきた生活の大部分は,決してMorphologieをやつたのでなくて,その大部分は臨床をやつておつたという誇りを自分でもつておるわけなんであります。そこで近ごろの若い諸君,といつちやちよつと悪いかもしれませんけれども,とにかくPsychiaterでなくて,Physiologであつたり,Psychopathologであつたり,あるいはMorphologであるような傾ぎがあつて,本当に臨床精神医学をやる傾向が少ないじやないか,ということを私非常になげかわしく思つておるような次第でございます。
しかし,臨床精神医学の仕事というものは,本当にむずかしい。むずかしいというのはなぜかというと,やはり学問がそれだけ若いからだと思うのです。それで七条さんがおつしやった第2の点で,精神医学にはPrognoseについて本がないじやないか,こういうお話,これは誠にそのとおりであります。それだけPsychiatrieがまだ進歩発達しておらんというところであります。Prognoseをはつきりと見究めるためには,10年,20年,あるいは30年,40年という年月を必要とする。それにもかかわらずこれはやらなくちやいけないことなんであります。精神科のPrognoseの本がないというのは,それだけむずかしいのだ,それだけ学問が若いのだ,その結果とご承知おき願いたいと思うのです。
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