- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
世界保健機構WHOの主催で,1962年12月4日から同月13日まで,マニラで「精神障害の疫学方法論」の会議が開かれた。西太平洋地域の17カ国から29人が集まり,日本からは加藤正明(精研)と百井一郎(厚生省)の2名が代表して参加した。会議は午前8時半から午後5時まで,主として討議のかたちですすめられ,過半は3人のdiscussion leader(英国のDr. W. I. N. Kessel,アメリカのDr. M. Kramerおよび台湾のDr. Tsungyi Lin)によつて,3小集団のかたちがとられた。参加国はオーストラリア,セイロン,台湾,香港,インド,イラン,イラク,イスラエル,日本,韓国,レバノン,マレー,ニュージランド,パキスタン,フィリピン,タイ,アラブ共和国である。討議,報告はすべて英語で行なわれた。
第1日はDr. KesselのPsychiatric Epidemiology:its scope and its relation to the rest ofpsychiatry,Dr. LinのHistorical Survey of Psychiatric Epidemiology in AsiaおよびDr. S. K. QuoのBasic Statistical Techniqueの3講演と討議があり,Kesselは疫学研究の2つの目的として治療に対するニードの評価と精神疾患の発生要因の究明をあげ,そのための問題として精神疾患の定義,事例発見などの困難性があるとのべた。Linはアジアの代表的調査研究として,日本の内村,秋元らの調査と厚生省の調査,台湾の3地区の調査(1946年および1948年)と原住民の調査(1962年),タイの地域調査,セイロン調査(1961年),香港のYapの自殺研究(1958),シンガポールでのMurphyの中国人,マレー人,インド人の比較調査(1959),オーストリアのCollmanおよびStollerの蒙古症調査(1962)などをあげ,精神医学的疫学の発展は,精神医学,公衆衛生,社会科学の協同にかかつているとした。Quoは疫学統計の基礎概念として,rateとratioの差,prevalence rate(point prevalenceとperiod prevalence)とincidence rate,disease expectancy rateなどについてのべ,生物統計の利用範囲,サンプリングの方法,サンプルの大きさ,事例発見のための資料,面接調査者の選択などの問題点にふれた。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.