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I.はじめに
いとぐち疾病を単に器質的,生物学的にみるだけでなく,その疾病をになう人間をも対象とし,患者の心理面や社会面もとりあげて,総合的,全体的に把握すべきことは,つねに精神身体医学の主張するところであり,また,実際臨床にたずさわるすべての人々の感ずるところであろう。これまでの精神身体医学の業績は,かかる把握の重要なることを示している。しかし,患者の心理面の重視は,単に個々の患者に向けられるばかりでなく,結局は,ふたたび個々の患者の心理が問題になるにしても,これら患者の心理面に影響を与える諸要因(心理的環境といつたもの)にも向けられなければなるまい。患者をとりまくいろいろの事態は,そのまま心理的環境を作り,患者のうえに投影されて影響しあうに違いない。
このような点から,病院という1つの集団をみてみると,疾病という,多かれ少なかれ生命的危惧を自己の身体にもつ者の集まりは,心理面の管理,すなわち,精神衛生管理のきわめて必要なる集団といわなければなるまい。しかも,このような患者の心理に関しての研究は,結核患者においてはかなりに注目されているけれども2)3)4)8),その他の患者に対しては,いまだなお未開拓な分野といえよう1)。
私どもは,この入院患者の精神衛生面の把握を,より明確ならしめるために,7つの態度次元をもち,尺度としての内的整合性のたもたれた調査表を作製した。その概要と,2,3の成績を記してご批判を仰ぎたいと思う。
目的 本調査表作製の目的は,入院患者を対象とし,罹患入院によつて惹起される精神衛生上の諸問題とその推移,変動を把握しようとするもので,その基底にある患者の心的態度を,尺度化されたスケールによつて,数量化し,比較対照することが可能なものにし,あわせて,医療上の精神衛生管理についての指標を与えようとするものである。
患者の心理面についての事柄は,さまざまの角度からとらえることができようが,本調査表においては,入院患者の具体的な個々の問題における心理についてではなく,それらの基底になる心的態度のありようとその推移の把握に中心がおかれている。したがつて,その方法として,問題となる心的態度の諸側面に関した一連の質問群を作製し,各質問に5段階の自己評定(Self-rating)を行なわせるような相加評定尺度(Summated-rating scale)として成立させ,数量的に態度を測定する方法をとつたわけである。このような態度測定の技術を導入することによつて,より明確に態度の変動を把握し,個々の事態を対照して論じうるように意図したわけである。
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