Japanese
English
研究と報告
上膊神経叢麻痺のさいに出現した幻肢について
Phantomlimb in the case of the brachial plexus paralysis
黒丸 正四郎
1
,
岡田 幸夫
1
,
増田 稲子
1
,
花田 雅憲
1
,
沢村 誠志
2
S. Kuromaru
1
,
S. OKada
1
,
I. Masuda
1
,
M. Hanada
1
,
S. Sawamura
2
1神戸医科大学神経科
2神医大整形外科
1Dept. of Neuropsychlat., Kobe Medical College
2Dept. of Orthopedics, Kobe Medical College
pp.623-628
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200475
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Ⅰ.序
幻肢phantomlimbが四肢切断者に認められるということは周知の事実であるが,四肢が切断されなくとも幻肢が出現する場合があり,たとえば脳皮質損傷の場合に出現する幻肢を,第三肢phantom thirdlimbとして特別に位置づけている。ところが上膊神経叢麻痺のさいに出現する幻肢も,肢体が切断されていないにもかかわらず,奇妙にも「もう1つ手がある」と訴えられ,第三肢としての性格をもつている。この幻肢が,脳皮質損傷の場合の第三肢とどのように異なつているか,また,四肢切断者の幻肢と比較してどのような特長をもつているかということを考察することは,幻肢現象や身体心像body-imageの研究に寄与するところが大きいと考える。事実,上膊神経叢麻痺による幻肢についてMayer-Gross6),Lhermitte5),Hasenjäger u. Pötzl2),Ajuriaguerra et Hécaen1),らの報告があるが,いずれの症例も,body-image phaenomenonに関する文献の中でも重要な位置を占めている。
しかし,かかる症例は,比較的まれなものであり,とくにわが国においてはまだ報告例はなく,現状では,上膊神経叢麻痺のさいに幻肢の出現するという事実すら十分知られていないのではないかと思う。
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