研究と報告
慢性分裂病に対する大量薬物療法
伊藤 篤
1
,
平田 正和
1
,
栗田 三郎
1
,
寺島 正吾
2
,
楠原 保
2
,
田中 邦男
2
1福岡県立筑紫保養院
2九州大学精神神経科
pp.861-866
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200381
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Ⅰ.はしがき
レセルピン,クロールプロマジンにはじまる精神薬物は,フェノチアジン系薬物の相つぐ登場によつていつそう補強され,精神障害の治療は一大飛躍を遂げたかにみえるが,精神病院の入院患者のほぼ60%を占める慢性分裂病に対しては十分な成功をおさめていないというのが実状である。その原因の1つは数多くの精神薬物が十分な臨床的スクリーニングを経ないままに臨床医に手渡されてくるために,無方針に使用されるという点にもあるが,それはそれとして,精神薬物のいずれもが慢性分裂病に奏効しないというのは,それは薬物療法そのものの限界を物語るものなのか,あるいは,現在広く実施せられている精神科治療指針に準じた常套的な薬物投与の方法に問題があるのか,いずれにしても,そこにひとつの問題があるのは事実である。
慢性分裂病に対する治療方針の最近の方向は,オープンドアの治療環境のもとで,積極的薬物療法を行ないながら,リハビリティション,作業療法などを通して,患者の社会性の回復をめざすという方向に向かつているが,いずれにしても,現状では薬物療法がその根幹になつているのは否めない。
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