Japanese
English
研究と報告
精神症状を呈した扁桃核腫瘍の1例
A Case of Amygdal Tumor with Psychotic Symptom
西川 喜作
1,2
,
大内 繁
3
K. NISHIKAWA
1,2
,
S. OUCHI
3
1慶応義塾大学医学部神経科
2精神医学研究所付属東京武蔵野病院
3昭和医科大学神経科
1Department of Neuro-Psychiatry, Keio University School of Medicine
2Seishin-Igaku Institute, Tokyo-Musashino Hospital
3Department of Neuro-Psychiatry, Shōwa Medical College
pp.583-587
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200350
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まえがき
脳腫瘍のうちあるものが初期において神経症状を示さず,もつぱら精神症状を呈するもののあることは知られている。精神機能の中枢である大脳やその付近に腫瘍ができれば大部分の患者に精神的変化の生ずることもまた当然のことである。Marty1)は数百例の脳腫瘍によつておこつた精神障害の研究を行なつているが,Riggs-Pupp2)はことにgliomaについて人格,情緒の変化を深く調査している。一方精神症状にかくれて脳腫瘍を誤診した例をPool-Correll3)は数多くあげて報告している。
ところで扁桃核についてみると,この研究はつい最近になつて行なわれはじめたといつてよく,この研究も主として神経生理学的方面から追求されて,limbic systemとの関係において考えられている。しかもこれはlimbic systemの中心的存在であり,情緒,欲動の機能に深く関係していることは,沢,植木4)5),Masserman6)らの研究で明らかであり,psychomotor epilepsyとの関係もよくいわれているところである。いずれにしても扁桃核およびその付近は視床下部にも近く,ほかの部分との神経結合連絡も多く,核自身として,またrelay stationとして精神活動面に大きな場を占めることは確かである。
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