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Ⅰ.緒言
思春期の女子に好発する「羸痩症」は19世紀後半Lasègue,Morton,Gullらにより記載せられて以来,anorexie hystérique,anorexia mentalis,anorexia nervosaなどと称せられてきた。最初は内分泌障害と無関係に論ぜられていたが,1914年Simmondsがprimärのhypophysäre Atrophieをある種のMagersuchtに発見して以来,本疾患の病因に関して,従来のPsychogeneseに対してOrganogeneseが論ぜられ,しばしばSimmonds氏病との異同について論議をかもしだしたり,混乱を招いたりしてきた。それは本疾患の場合にもSimmonds氏病と同じく羸痩とともに下垂体前葉機能障害をしばしばともない,身体症状だけから区別が困難となる場合が多いからである。こんにちでは,本疾患にみられるSimmonds氏病様症状はprimärの下垂体前葉機能障害によるためではなく,二次的な身体的随伴現象であるとの見方が強い。しかしDelayやDecourtのごとく本疾患をendocrino-névrose juvénileあるいはcachexiepsychoendocrinienneなどと名づけて,思春期に発生する精神身体的危機の1つの表現とみる見方など注目すべきものがある。
精神症状としては,LaboucariéおよびBarrésの報告した50例,KayおよびLeighの報告した38例,梶山の報告した20例をみても,多かれ少なかれ精神変調を認める。すなわち,自己中心的,わがまま,抑うつ的気分変調,不機嫌,反抗的,孤独,劣等感,強迫神経症徴候などZuttが詳述したごとき特徴がみられる。これらの症例の中に小児的態度,嫌人的態度とならんで〃嘘言〃,〃盗み食い〃のみられるものがわずかばかりみられるが,われわれは以下のべる症例の観察により嘘言,盗癖などの奇行と,本症発現との関連を追求した。
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