Japanese
English
研究と報告
「側頭葉性」失語症
"Temporar" aphasia
斎藤 正己
1
,
大橋 博司
2
M. SAITO
1
,
H. OHASHI
2
1関西医大神経科
2京大精神科
1Dept. of Neuropsychiatry, Kansai Medical School
2Dept. of Psychiatry Kyoto University, Schcol of Medicine
pp.201-205
発行日 1960年4月15日
Published Date 1960/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200202
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
いろいろな種類の失語症の患者について,長期間観察を続けていると,それぞれの症状が固定したものではなく,原因となつた疾患の経過と関連して次第に変つて行き,時としては一見全く異つた型の臨床像を示すような場合が少くないことに気付く。しかも,その変化は全くでたらめに起るものではなく,ある種の法則性があつて,それぞれ何かきまつた方向に進んで行くような印象をうける。さらに,こういう移行がみられる失語型式の間には,本来密接な相互関係が存在しているとも考えられるのである。このような立場から,種種の病像変化の様式を把えることが,失語症をよりよく理解する上にいかに重要であるか,今更説明する必要もないだろう。
今回はいわゆる「感覚失語」に焦点を合わせ,われわれの観察した症例について,その構造を分析し,病像の推移を追うことにした。しかし,臨床像の推移を論じるに当つて解剖学的な変化を無視することはできない。われわれは決して古典的な局在思想にこだわるわけではないが,たとえ,WernickeやLichtheimによつて代表された,機械的な失語症理論が,そのままの形ではすでに通用し難いものになつているにせよ,ともかく失語が病巣症状であることを疑うものは少く,その臨床的記載と解剖学的所見とは動かしがたい事実であり,症状と病巣の関係は,依然として重要な研究課題であることには変りがないからである。
Copyright © 1960, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.