特集 児童精神医学
展望
フランスの小児精神神経病学とその現在
吉倉 範光
1
,
中島 宏
2
N. YOSHIKURA
1
,
H. NAKAJIMA
2
1Université de Nihon, Tokyo
2Institut national d' Hygienè, Paris
pp.627-632
発行日 1959年9月15日
Published Date 1959/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200132
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フランスにおける医学のこの分野の特徴ある様相を紹介することは,つぎのいくつかの理由からきわめて困難である。すなわち,この若い専門科学が,発足の第一歩から自国の伝統よりも国際的な協調を中軸としたこと,成立の基礎をなす学問が,精神医学,神経学,小児科学,公衆衛生学,心理学,精神分析学,教育学,法学,社会学など広範囲の分野におよび,そのおのおのの伝統をも包含した複雑な函数として成立していること。フランス人の性格として,その思想は外に対しては非常に開放的で自由である半面,内に対しては強烈な個性をもち,個々のグループが特別な方法論をもつて仕事を進める傾向があること,しかもこれらのグループは経済的に各種の団体と結びついて全く多様な活動を行つていること(このことはこの学問が経済的に各自の理論を実行に移すことが比較的容易であることを示す)にある。しかしこの道にたずさわる人達の数,種々の施設の数,受診者の数,あるいは業績の発表,一般の関心,精神衛生的コミュニケイションなどについては,フランスがヨーロッパ第一流の国であることはまちがいない。
以上の困難をさけて,この学問の一面を紹介するため,その実際の活動の現況を,つぎの順にしたがつてのべたいと思う。
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