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はじめに
うつ病など気分障害などによる抑うつ状態を理由とした休職の長期化,また休職と復職を繰り返すといった問題が取り上げられるようになって久しい。その背景には,近年増加している非定型的な病像1,10,18)が指摘されており,比較的若い年代の「抑うつ状態」に関していえば,①双極Ⅱ型障害の可能性10),②背景にごく軽度な高機能発達障害の要素の存在12),③就労以前の児童青年期に発症した気分障害や不安障害3),により「抑うつ状態」を呈した結果,出社不能な状態になり,休職する症例も少なくないことも考えられる。また,外来での限られた診療時間内に得られる情報だけで,復職しても業務が行えるかどうかの復職準備性を確認することは,臨床経験豊かな精神科医でも困難な作業であることは,繰り返し指摘してきた5~8)。
医療機関で行うリワークプログラムとは,診療報酬上の精神科デイケアなどの枠組みを利用して行う,治療の一環としてのリハビリテーションであり,その目的は,復職準備性の確認,そして最終的な目的は再休職の予防である。リワークプログラムを実施する医療機関の集まりである,うつ病リワーク研究会19)によると,2008年の当会発足時に30足らずであった実施施設数は,2013年現在156施設であり,この6年間に約5倍と急速に増加している。また,現在の156施設のうち,99施設(63.5%)が診療所である。入院施設を持たない精神科医にとって,リワークプログラムを実施する精神科デイケアというフィールドにおいて,臨床的観察を行うことができることから,重要な診断の場ともなっている。
リワークプログラムの治療的要素は,次の4要素に集約できる8)。第1の要素は,集団で行われるところにある。戻るべき職場で,コミュニケーションが上手に取れるようになることである。第2の要素は,主には気分障害圏で復職を目的としている利用対象者を限定して,均一な集団で凝集性を高めている点であり,「抑うつ状態」で「休職中」という共通性のある仲間であることも治療的に働く。第3の治療的要素は,医学的リハビリテーションという点で,病状の安定性を確認しながら段階的に負荷をかけ,復職準備性を確認して復職となる。復職後は,フォローアップにより再休職の予防がより確実になり,家族への支援も可能である。第4は,プログラムの内容が心理社会療法である点である。自分が休職するに至った原因や誘因を考え,自らの内面に潜む課題に気付くことが重要であり,その課題を認識した上で心理療法や集団療法を用いたプログラムが提供される。
本稿では,メンタルクリニックで行われるリワークプログラムとして,2005年からプログラムを導入しているメディカルケア虎ノ門(以下,当院)を例に,その治療構造と実際を取り上げ,またそのアウトカムを筆者らの研究を参照しながら述べることとしたい。
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