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第107回日本精神神経学会学術総会は,2011年10月26,27日の2日間,ホテルグランパシフィックLE DAIBA,および,ホテル日航東京(東京都港区)において,三國雅彦会長(群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学分野)のもと開催された。本総会は,当初,同年5月に予定されていたが,3月11日に発生した東日本大震災で被災された方々への支援を優先するべく5月21日に議事総会と東日本大震災支援に関するワークショップのみを開催し,学術総会の日程を延期,短縮して開催された。総会テーマは「山の向こうに山有り,山また山―精神科における一層の専門性の追求―」で,専門性の追求という言葉の通り,50以上の関連学会からの報告が行われた。日程が短縮されたこともあり,最大18会場でプログラムが同時進行するという構成であったため,興味ある企画をすべて網羅し参加することは不可能であったのが残念であったが,参加者はおよそ5,000人で,立ち見の出る会場もみられ活発な討議で盛り上がりをみせていた。会長講演,特別講演のほか,先達に聴く,28の教育講演,41のシンポジウム,2つの国際シンポジウム,症例検討会,精神医学研修コースや専門医を目指す人の特別講座などの教育プログラム,そして一般演題は,口演177演題(44セッション),ポスター83演題(17セッション)と,臨床から基礎研究まで多岐にわたる発表で盛りだくさんの内容であった。また,東日本大震災の復興計画と中長期的支援と題したシンポジウムも企画され,被災県からの報告や今後の取り組みについての議論が行われた。日程の変更などもあり,残念ながら,特別講演が予定されていたJuhn Wada教授,Herbert Meltzer教授の来日はかなわなかったが,Meltzer教授は,インターネット通信を利用して滞在先のフィンランドからの中継で講演されるという新たな試みも行われた。国際シンポジウムには,遠くはナイジェリアやモロッコといったアフリカからの参加者を含む12名の海外若手精神科医が参加し,日本の演者を交えて,国際共同研究の実現に向けたシンポジウム,対人恐怖に関する症例検討が行われ,本学会の国際化を実感した。海外参加者は,学会期間中,日本若手精神科医の会(JYPO)の協力で都立松沢病院を訪問したが,日本の精神科医療の一端に触れることができ貴重な体験であったとの感想が聞かれた。
次回の第108回総会は,齋藤利和会長(札幌医科大学神経精神医学講座)のもと,2012年5月24~26日に,札幌コンベンションセンターで開催される。「新たなる連携と統合:多様な精神医学・医療の展開を求めて」をテーマに,関連学会とのさらなる連携,本学会のさらなる国際化に向けたプログラムが多数企画されている。事務局一同,多数の皆様のご参加をお待ちしております。
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