書評
―ブリス EV,エドモンド G 著,桐田弘江,石川元 訳―アスペルガー症候群への解決志向アプローチ―利用者の自己決定を援助する
村田 豊久
1
1村田子ども教育心理相談室
pp.822
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101956
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
成人になったアスペルガー症候群の方々への心理的援助についての実際的な指南書とでもいうべき書物なのだが,その内容には驚くほど啓発的なことがらが多く,アスペルガー症候群についてはもとより,発達障害の精神療法について幾多の示唆を与えられる。
アスペルガー症候群は70年前,ハンス・アスペルガーが特異な発達のパターンを示す一群の幼児を自閉的精神病質と名付け,根気強い長期間の心理治療教育の必要性を訴えたことに由来する。アスペルガーは,この子どもたちはその潜在的能力を信じて導いてやると,大きくなって著しい変化を見せ社会的自立の可能性も生まれてくるが,どのように好転した子どもでもいくらかの自閉的性格特徴が残るのでその社会適応にはいろいろの困難がつきまとうことも同時に示唆していた。しかし,アスペルガーのこのような提唱は長い間日本のみならず外国でも正しく認識されず,カナーに次いで自閉症の亜型の記載を行った人という理解しか持たれていなかった。
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.