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はじめに
近年,わが国で性同一性障害が注目され始めたのは,1996年7月2日,埼玉医科大学倫理委員会が性同一性障害の手術療法を正当な医療行為と判断したという大々的な報道がなされてからであろう。その答申の中で,ガイドラインを策定すべきであるとの提言がなされた。それを受けて,日本精神神経学会は性同一性障害に関する特別委員会を設け,1997年5月,性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(以下,ガイドライン3~5))の初版を策定した。その過程で,当事者の生活史・現病歴などを聴取し,多くの症例では幼少時から性別違和感を抱いていることも把握してはいたが,実際には小児の性同一性障害に関する治療経験はなく,初版ガイドラインの中では触れられなかった。
2001年10月より,人気テレビドラマ「3年B組金八先生」で性同一性障害をテーマにしたシリーズが放映され,社会における性同一性障害への関心と理解は,それまでとは比較にならないほどの拡がりをみせた。それを機に中学生や高校生の受診も増えてきた。その中で特に訴えが多かったものは,制服着用への抵抗と第二次性徴への嫌悪感であった。
その後,ガイドラインは2度にわたって改訂され,現在のものは第3版である。特に第2版への改訂作業の中では,第二次性徴への医学的介入も議論されたが,一般的治療としてガイドラインに盛り込むことは時期尚早とされた。しかし,なんらかの介入が必要な症例については,個別に検討することを妨げるべきではないとの判断から,ガイドライン上特に制約を設けることもなかった。
さらに,近年の新聞報道などで小学生の性同一性障害の例が紹介され,文部科学省から性同一性障害の児童生徒に配慮すべき通知が出されるに及んで,教育現場ではどのように対処したらよいのかという関心が高まってきた。この数年,MTX(male to X),FTX(female to X)と自称し,中性化や無性かを目指すといった性同一性障害と紛らわしい症例6)の受診も増えてきた。ジェンダー・アイデンティティや性指向が不確定だったり動揺的なものに対し,ICD-107)では性成熟障害(F66.0)なる項目を設けている。
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