「精神医学」への手紙
「摂食障害患者の血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度」へのコメント―心不全の病態生理の観点から
石川 博康
1
1中通リハビリテーション病院精神科
pp.407
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101850
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中井による摂食障害患者のBNP濃度に関する報告(本誌52巻11号)を興味深く拝読した。中井の報告は心不全,特に心室負荷の指標であるBNPに注目し,体格指数(BMI)と相関すること,神経性食欲不振症(AN)制限型で異常高値を示す割合が高いことを示した。129症例の積み重ねから導いた貴重な知見であり,AN患者で心不全の合併がまれでないこと,さらにはAN患者の心不全がrefeeding syndrome1)に関連して議論されがちであるが,「refeeding」とは無関係に心不全を生じている可能性も示唆している。そのうえで,入院を要する重症者については別に検討が必要との指摘があった点,心不全を来す機序については十分言及されていない点について,小生らの入院症例の報告が寄与するところがあると考えて寄稿した。
自験例2)は21歳女性のANで,入院時BMIは12.7kg/m2,BNP値は990pg/mlであった。心不全は比較的まれな高心拍出型で心嚢液貯留を伴っており,原因疾患として脚気心が疑われた。ビタミンB1欠乏の証明が不十分で確定診断に至らなかったが,短期間で改善した臨床経過も脚気心を強く示唆するものであった。他にも山本らのANの入院症例の報告3)があり,BMIとBNPはそれぞれ14.4kg/m2,52pg/mlであり,心嚢液貯留に伴う左室拡張障害が心不全の原因と推定された。
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