羽ばたき振戦を伴う精神病症状の増悪を呈し，抗てんかん薬と抗精神病薬の減量で症状軽快した統合失調症の1例

A Case with Schizophrenia that Exacerbated Psychotic Symptoms with Asterixis Treated by Tapering Anticonvulsants and Antipsychotics

はじめに

　統合失調症の薬物療法において，興奮の鎮静や併発する気分障害の治療のために，さらには陽性症状や陰性症状自体の改善目的に，valproate(以下，VPA)やcarbamazepine(以下，CBZ)などの抗てんかん薬が併用されている^2,4)。一方で，これらの抗てんかん薬投与は時に代謝性脳症を併発し，その際には同剤の減量または投与中止を要すると報告されている⁶⁾。しかし，統合失調症患者への抗てんかん薬投与中の代謝性脳症は報告が少なく，その対応についても一定の見解に乏しい。

　我々は，複数の抗てんかん薬および抗精神病薬を投与中に精神病症状の悪化および羽ばたき振戦を伴う軽度の意識障害を呈し，抗精神病薬の増量による鎮静の試みにむしろ症状が増悪し，逆に抗てんかん薬と抗精神病薬の減量により症状が軽快した統合失調症の1例を経験したので，考察を含め報告する。