書評
―Neil B. Sandson, M.D. 著,上島国利,樋口輝彦 監訳,山下さおり,尾鷲登志美,佐藤真由美 訳―精神科薬物相互作用ハンドブック
下田 和孝
1
1獨協医科大学精神神経医学
pp.1140
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101741
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薬物相互作用への関心の高まりに応える書
抗ウイルス薬であるソリブジンと代謝拮抗薬であるフルオロウラシル(5-FU)との薬物相互作用による重篤な副作用が問題となったのは1993年である。ソリブジンの代謝物であるブロモビニルウラシルが5-FUの代謝酵素であるdihydropyrimidine dehydrogenaseを不可逆的に阻害する結果,5-FUの血中濃度が上昇,5-FUの副作用である白血球・血小板減少などの重篤な血液障害を惹起するというメカニズムである。わが国で開発されたソリブジンが市場から姿を消すことになったこの薬害事件や1990年代にcytochrome P450(CYP)を中心とする薬物代謝酵素の解析が急速に進んだことを背景に,薬物相互作用に関する関心は高まってきたといえる。
精神科領域では,1999年にわが国最初の選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)としてフルボキサミン,2000年にはパロキセチンが臨床現場に導入された。これらのSSRIは従来の三環系抗うつ薬などとの副作用プロファイルの差異が認められるが,さらに薬物代謝酵素の阻害作用という点でも特徴があり,薬物相互作用の知識は精神科薬物治療において必須であろうと思われる。
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